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ラスクを用いた防音計画例 更新日 2007/06/21
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一戸建ての個人住宅で存分にオーディオを楽しみたい。
隣接する子供部屋や近隣への騒音伝播が気になるとのことで、測定して現状を確認し、 問題となった間仕切壁等をラスクで対処しました。

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新築住宅2階にある書斎兼オーディオルームで音楽を存分に楽しみたいが、隣室の子供部屋への影響、 吹き抜けの階段を伝わっての一階への影響、さらに外壁から隣家への影響が気になるとのことで依頼が ありました。気になる騒音の伝播を測定し、防音計画を建て提案しました。

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事前の測定結果
①オーディオルーム 〜 子供部屋
オーディオルームと子供部屋の室間音圧レベル差の測定結果、遮音等級(D値)は「D−35」でした。
「D−35」という等級は、以下のように考えられます。
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室間音圧レベル差:床、壁を介した2つの室において、一方の室で音を発生させ、他方の室で 音圧レベルを測定した時の両室間の音圧レベル差。その値の大きいほうが、より遮音性能が良い。
遮音等級:遮音性能に応じて等級がついており、D値と呼ばれている。 これもその数値の大きいほうが、より遮音性能が良いとされる。
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室間音圧レベル差に関する室用途別適用等級によると、「集合住宅」の「居室」で「特級」が「D−55」、「1級」が「D−50」、 「2級」が「D−45」、「3級」が「D−40」で、「D−35」は等級がありません。
②オーディオルーム 〜 廊下
オーディオルームに設置された防音扉の性能チェックと、防音扉から漏れ出る音が廊下側の 間仕切り壁を通り、子供部屋に侵入する可能性を調べるために測定を行いました。

●防音扉は、平均的には「約30dB」の遮音性能があるといえます。カタログでは、遮音性能は 平均的に約35dBくらいでしたので、現場での測定を考えるとこれくらいのように思われます。
●しかし、この遮音値から推定すると、廊下と子供部屋の間仕切り壁の構造が「吸音材挿入なしで 両面石膏ボード(12.5mm)仕上げ」であるので、廊下から壁を通して子供部屋への音の侵入を考慮す る必要があり、また、廊下に漏れ出た音が、廊下を伝わり、反射、回折によって子供部屋の扉下部 の隙間から侵入することも考慮する必要があります。このことは、「オーディオルーム」「子供部屋」 間の壁の遮音値が改修によって良くなれば、余計に気になることと考えられます。
●さらに、廊下の片側が吹き抜けになっているため、オーディオルームから漏れ出た音が家じゅうに、 あるいは外に面した窓を通して外部に伝わることが考えられることから、防音扉の性能上、 施工上の問題も考慮する必要があります。
●逆に、家の中で発生した音(主に1階)が吹き抜けを通り、廊下に面した壁や扉の隙間から子供部屋 に、また防音扉を通してオーディオルームに侵入することも考えられます。
以上から、防音扉、廊下と子供部屋の間仕切り壁、外に面した窓も考慮に入れる必要があると思われます。
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③オーディオルーム 〜 道路
オーディオルームの玄関側に面した窓を通して、外部の道路上でどの程度の音漏 れがあるかを調べるために測定を行いました。
●オーディオルームと道路上の音圧レベル差を測定したことになりますが、 部屋で97dBの音を出した場合、実際の道路通行者には60dB(騒音レベルでは51dBA)の音 が聞こえることになります。「騒音一般に係る環境基準」では、騒音レベルは、 昼間50dBA、朝夕45dBA、夜間40dBA以下となっており、音源の出力レベルによりますが、 外部への音漏れには注意を払う必要があるといえます。また、外部からの騒音の侵入も十分に考えられます。
●距離減衰の計算により、受音点(騒音計)を道路上から窓面の外側に設置したと仮定すると、 窓の遮音性能は約20dBとなり、窓は普及型サッシ窓の特徴を示していると思われます。 さらに遮音性能を上げるためには、この窓を2重窓に変えること、あるいは、 気密サッシとの併用によって可能になります。夜間の騒音レベルを考慮の対象にすれば、 現在より約10dBほどの遮音性能向上の必要があると思われます。
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④オーディオルーム 〜 外周壁
オーディオルームから外周壁を通して、外部にどの程度の音漏れがあるかを調べるために 測定しました。
●内外音圧レベル差、遮音等級は「D’−35」でした。外壁の構造がどのようなものかは不 明ですが、この程度の遮音等級であれば、外周壁を通しての音の伝搬は考えなくてもよい と思われます。いいかえれば、外周壁に関し、施工上目立った問題点はないと云うことです。
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防音計画の提案

以上の測定結果から、防音計画を立てました。

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「オーディオルーム」の音が「子供部屋」に侵入することを防ぐため、 「オーディオルーム」と「子供部屋」、「廊下」と「子供部屋」の間仕切壁の遮音性能をまず高める。
次に、「オーディオルーム」から外部への音漏れに対して、あるいは外部の音の「オーディオルーム」 への侵入に対して、窓の遮音性能の向上を高める。
その後、さらに子供部屋への音の侵入が気になる場合、その伝搬経路は、防音扉を通して廊下 に漏れ出た音が廊下を進み、子供部屋の扉下部の隙間から侵入する経路と考えられるため、防音扉の変更、扉下部の隙間を検討する必要があるということになります。
「オーディオルーム」と「子供部屋」、「廊下」と「子供部屋」の間仕切壁の改修計画図面です。

  • どちらの壁も子供部屋側から改修することになります。
  • 壁の構造は、独立した「たて枠」を1列追加し、千鳥(両壁面のスタッドをずらす)の位置に配置し、 中空層を設け、その両側に吸音材を挿入するといったプランです。一列独立した「たて枠」を入れることで両室間を縁切り、千鳥配置で総壁厚を減らし、かつ壁面への音圧を抑えながら、遮音材、吸音材で音の減衰を図ろうとするものです。
  • 「ラスク」を遮音材として用いています。

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図の通り、「D−35」に対して、施工後は「D−45」になりました。壁自体の遮音性能から見ると「D−50」近くになると 予想できましたが、既存の防音扉の遮音値が見積もり通りでなかったこと、子供部屋の扉の隙間等が遮音性能を減じた原因と 考えられました。しかし、一応の防音設備が整ったあとは、AVルーム内の音場調整はラスクのパーティションで行いました。
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