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ラスクを用いた防音計画例 更新日 2007/06/21
shinkansen

「新幹線高架道の防振」の詳細です。
「軌道モーターカーの防音」と関連があります。

JR東海の名古屋保線所管内にある新幹線の「7km公害区間」において、「レジンラスク」 を用いて騒音対策を実施した時の測定報告です。文中の「ホン」は「dBA」と読み替えてください。

(1) 7km区間における騒音振動対策について
 ラスクの効果を調べるために、まず、軌道モーターカー騒音の減衰効果を測定し、その後、 新幹線で2回に渡り実験を行い、それらの実験結果から第3回目の実験を提案しています。

(2) 新幹線高架区間(有道床)における防振工(「新幹線高架道の防振」)
 《レジンラスク道床更換施工後の騒音レベル測定結果のまとめ》
  (1)の報告書で提案した第3回目の実験の測定結果です。

(1) 7km区間における騒音振動対策について

表題のことについては、昭和47年ころから列車通過時の騒音振動と相まって夜間作業における作業騒音に 対して地元住民の理解が得られなくなり、以後土曜日に限り軌道整備(むら直し、通りなおし)が施工で きるのみで、レールの60kg化の工事に際しても話し合いが難航し、昭和50年8月まで施工できず60kg化の 推進に支障をきたしました。
また、マルタイ作業や道床更換に関しても同様でマルタイ作業は、昭和59年まで作業中止、道床交換は 昭和56年7月に一部個所で強行したところ、地元の反発、突き上げがひどく250m施工したのみで、翌昭 和57年は施工できない状況となりました。しかし、誠心誠意話し合いを続ける中で昭和58年度に入り、 冬期(10月〜3月)に限りという条件つきで交渉がまとまり、さらに翌年の昭和59年からは、区間別にラ ンクをつけ施工時期により工種を限定して作業を進めてまいりました。
しかし、環境庁から「新幹線鉄道騒音に係る環境基準について」の告示第45号(3年以内に80ホン以下 を達成)が出され、さらに昭和60年7月には本社環境対策室から「東海道山陽新幹線スピードアップに 伴なう環境対策について」が出される中で7km区間で列車走行時にすこしでも騒音振動に有効な手段が とれないかと模索していたところ、特許品で大変効果のある材料(ラスク)があることを聞き、関係者 を呼び材料の特性、耐久性等の性質について検討した結果、一度テストするに値するとの結論を得た。
 そこで手始めにモーターカー騒音に対する効果について検討することにした。テストの結果は別紙 −1のとおりであり、最大23ホン、平均10ホンの減衰を得ることができた。
上記資料を得たことから列車に対しても効果があると考え、道床更換施工時に合わせ、以下の試験的 施工計画を作成した。

  1. 試験場所:7km公害区間とする。
  2. 施工延長:列車長の約1/2(L=200m〜400m)
  3. 材料寸法:第1回 巾 400m
          第2回 巾 600m
          第3回 巾 1200mの3種類とした(別紙−2のとおり)。
  4. 測定項目:騒音
  5. 測定場所:スラブ下(1.0m)
          軌道直下(地上1.2m)
          12.5m離れ(地上1.2m)
          25.0m離れ(地上1.2m)とする。

昨年度第1回、第2回についてのテスト実施した結果は、別紙−2のとおりであり、今回第3回の試験を実施したい。

----- 別紙−1 -----


shinkansen


単位:
dBA
A(右側) B(左側) C(前方)
施工前 第1期
施工
第2期
施工
施工前 第1期
施工
第2期
施工
施工前 第1期
施工
第2期
施工
0m
機側



86
95
104
85
93
100
−1
−3
−4
84
92
98
−2
−4
−5
87
97
104
84
94
100
−3
−3
−4
82
91
98
−5
−6
−6
93
103
111
91
101
111
−2
−2
77
87
95
−16
−16
−16
5m
地点


80
85
92
74
83
90
−6
−3
−2
72
81
87
−8
−5
−5
79
85
94
73
81
88
−6
−5
−6
71
79
85
−8
−7
−9
79
88
95
77
85
91
−2
−3
−4
68
77
84
−11
−11
−11
10m
地点


78
84
88
68
76
84
−10
−8
−4
66
73
81
−12
−11
−7
75
82
90
69
75
83
−6
−7
−7
65
71
79
−10
−11
−11
79
84
88
74
81
86
−5
−3
−2
63
72
79
−16
−12
−9
15m
地点


82
81
85
65
73
80
−17
−8
−5
64
70
76
−18
−11
−9
74
79
85
67
72
80
−7
−7
−5
62
68
74
−12
−11
−11
75
80
85
71
79
83
−4
−1
−2
60
69
76
−15
−11
−9
20m
地点


75
80
81
64
70
76
−11
−10
−5
62
67
72
−13
−13
−9
73
74
83
61
68
77
−9
−6
−6
59
65
70
−14
−9
−13
80
79
84
70
77
81
−10
−2
−3
58
66
74
−22
−13
−10
25m
地点


70
73
78
63
68
74
−7
−5
−4
61
65
68
−9
−8
−10
71
75
78
63
65
76
−8
−10
−2
57
62
67
−14
−13
−11
80
81
83
69
75
80
−11
−6
−3
57
64
70
−23
−17
−13


グレー部分は、施工前に対する効果 



----- 別紙−2 -----


第1回テスト S60年8月10日〜9月28日 ラスク敷設位置上り線334K396M〜334K596M=200M
nagoyahosensyo-00.gif 騒音レベル(dBA) スラブ下
(1.0m)
軌道直下
(地上1.2m)
12.5m地点
(地上1.2m)
25.0m地点
(地上1.2m)
ラスク敷設前 78.0 77.5 79.5 81.6
ラスク敷設後 73.4 72.7 77.5 79.9
対比 △4.6 △4.8 △2.0 △1.7
※ラスク敷設数量 0.8m2/m×200m=160m2



第2回テスト S60年10月25日〜12月18日 ラスク敷設位置 下り線337K250M〜334K450M
                                  上り線336k910M〜337K110M 計400m
nagoyahosensyo-01.gif 騒音レベル(dBA) スラブ下
(1.0m)
軌道直下
(地上1.2m)
12.5m地点
(地上1.2m)
25.0m地点
(地上1.2m)
ラスク敷設前 83.1 79.0 78.8 79.5
ラスク敷設後 73.7 71.5 78.0 79.4
対比 △9.4 △7.5 △0.8 △0.1
※ラスク敷設数量 1.2m2/m×400m=480m2



第3回テスト S61年度 第4−四半期の予定
nagoyahosensyo-02.gif 騒音レベル(dBA) スラブ下
(1.0m)
軌道直下
(地上1.2m)
12.5m地点
(地上1.2m)
25.0m地点
(地上1.2m)
ラスク敷設前
ラスク敷設後
対比


(2) 新幹線高架区間(有道床)における防振工
《レジンラスク道床更換施工後の騒音レベル測定結果のまとめ》

○列車速度の計測方法:何れも軌道直下地上で計測。
地上1.2mのマイクロホンで集音し(A特性、FAST)レベルレコーダー(紙送り速度10mm/秒、 クォーツ・シグナル音で送り速度は検定確認)に記録し、有効なピーク間隔寸法から1/10秒単位で演算した。

○騒音測定方法及び測定機器

  1. 普通騒音計(リオン、NA−20)
  2. FFT分析器(小野測器、CF−210)
  3. 普通騒音計(音響機器、OS−11)
  4. レベルレコーダ(リオン、LR−04)

周波数分析は、1.と2.により、列車通過中のほぼ中間点の安定した状況の瞬間値をストップ メモリさせ、(F特性値、1/3オクターブ分析)F特性値での1/3オクターブバンドレベル値(25Hz〜20kHz)を プリントアウトさせ、A特性はこれを補正してデシベル演算した。
直下の地上1.2mには、3.と4.を定置し、列車速度の計測をかねて騒音レベル (A特性オーバーオール値=ホン[dBA])を記録させ、ピーク値の平均値を1dB(A)単位で読んだ。
地上1.2mの測定は三脚によりマイクロホンを固定した。
スラブ下1.2mの測定には予め継ぎ足しパイプを準備してマイクロホンを移動させて測定した。

○測定場所および測定結果

nagoyahosensyo-03.gif
騒音レベルの測定場所 施工前 施工後
(A) 高架中心線上
   スラブ底面下1m
84.1 74.9 −9.2
(B) 上り軌道中心線上
   スラブ底面下1m
83.3 75.0 −8.3
(C) 地上1.2m(0m地点)

84.1 76.1 −8.0
(D) 上り線側0m地点より25m
   地上1.2m(25m地点)
79.2 71.6 −7.6
暗騒音レベル 〜66.8

※25m地点の測定値は、列車のパンタグラフのスパーク音のほとんど含まれていないデータを比較している。

nagoya02.gif nagoya03.gif

○レジンラスク施工前後の騒音レベルの比較分析(図表参照)

図表番号
A−00 高架中心線上スラブ底面下1m(A)点での騒音分析値の比較。1.25kHz以下の低周波音域で、 スラブ面の振動音が大幅に減少し、オーバーオール値(AP値)で、9.2ホン(dBA)低くなっている。

A−01 上り軌道直下スラブ底面下1m(B)点での騒音分析値の比較。 前図(A−00)と大差ない変化を示し、AP値で8.3ホン下がった。

A−02 上り軌道直下地上1.2m(C)点での騒音分析値の比較。 高架下の高さ(約8m)に応じた反響音(40Hz、80Hz、160Hz)が多少増幅されるが、効果は同等でAP値で8ホン下がった。

A−03 上り線側25m地点地上1.2m(D)点での騒音分析値の比較。 (ひかりの場合) 低周波音域も平均して低くなったが、400Hzの固有振動音が表れる。これは列車自身が出す音 とは考えがたく(500Hzや200Hzでは大幅にレベルが下がっている)、構造物の固有振動音と考え られ、既設の防音壁面の板振動音の可能性が強い。・・・別途に振動と騒音の関連を調査する。 1kHz以上の高音域帯でも暗騒音レベル近くまで低下しているのは、やはり高架構造のスラブ 振動に起因する音が減ったものと思われる。

(イ) 施工前上り線側の0m(C)点と25m(D)点での騒音分析値の比較。

(ロ) 施工後上り線側の0m(C)点と25m(D)点での騒音分析値の比較。

(イ)と(ロ)の何れでも、25m地点(D)点の騒音が、0m(C)点の騒音 と連動して変化していることが裏付けられる。従って施工前の25m地点での 騒音レベルを支配していた500Hz〜1.25kHz( )印付近の音は構造体の 振動音であり、AP値79.2ホンは施工後には73.1ホンまで約6ホン下げ得る条 件が作り出されている。ここで更に前述の400Hz近傍の振動音源対策が加えら れれば、更に約3ホン程度の減音も可能となり、70ホン以下のレベルを確保することができる。

A−05 施工後上り線側25m地点(D)点での騒音分析値の比較事例(ひかりの場合)。 スパーク音の多い事例(ひかり330号)と少ない例(ひかり234号)。 スパーク音は500Hz以上の高周波成分が多く、施工後でもこの音が騒音レ ベル(80ホン)を支配している。施工前は構造体の振動音とほぼ同一レベル であったことも裏付けられた。

以上、上り線側についての騒音分析値を比較検討した結果、25m地点(D)では、

  ● 高架構造物スラブ面の振動音を低下させずに集電系の改良を行っても騒音レベルは75ホン以下には下がらない。
  ● 防音壁構造の振動音と思われる固有音(400Hz前後)が残ると、70ホン以下には下げられない。

nagoya02.gif nagoya03.gif
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nagoya02.gif

○レジンラスク敷設区間の高架測定結果の考察

 下り線側での騒音測定レベルと振動測定レベルについて、高架スラブ直下1m及び、軌道直下(地上1.2m)の騒 音レベルが10ホン近く低下しているのは「スラブ上の列車走行音に対する直接遮音効果」+「スラブ自身の 板振動レベルの低下」の何れもが、A特性で高い音圧レベルを示す中・高音域で大幅に減少した結果であり、 従来この質の大きな音源として高架スラブ低部から発生しているので、板振動レベルを下げることは、 騒音対策に不可欠と思われる。

  ※可聴範囲内で低周波帯域においては、音圧Pは振動加速度に比例する。

 12.5m地点や25m地点で上昇するのは、側壁を乗り越えてくる直接音(例えばパンタグラフからの音)と、 防音壁自身の板振動により発生する音とが支配的になってくるものである。
 このうち、防音壁の板振動は周波数が低く、しかも大きな平面音源であるために、距離による減衰が 極めて少なく遠隔地点でもこの種の音圧レベルはなかなか下がらない。
 一方、振動レベル(オールパス値)はあまり変化しないが、実際に加速度レベル(エネルギー)の周 波数特性値のパターンは変化していると考えられる。
 即ち、「高架構造体」+「走行車両」の重量と弾性地盤との組み合わせによる振動系に対し、 列車走行の上下方向加振力が作用すれば、大きなレベルの低周波振動(10Hz以下)が列車速度の 関数で発生し、減衰の少ない広域伝播をし、振動レベルを支配する。
 騒音源となっているスラブの板振動は、車輪−軌道−枕木−バラストから伝わる振動と、 音圧で励起されるコンクリートの自由振動とによるものなので、前記のようにレジンラスクの 遮音・吸音・制振の効果が活用される対象となる。

  [振動の周波数特性パターンの変化を観察すると確認できる]