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ラスクを用いた音場調整例 更新日 2007/06/21
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展示館の独特な建物であることから残響音に問題が生じ、その対策にラスクを用いました。

ラスクのパーティションを適正に設置することで、残響時間が調整されました。

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フラッターエコー対策、残響時間の調整は、他に「伊丹AIホール」「大津SPホール」「大阪フィルハーモニー会館」等があります。


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ポートピア・サントリー館内では5チャンネルの立体音楽が演奏されているが、会場は円筒形の偏平な建物で あるため反響による音波の乱れが起こり、音像をぼかし、明瞭度を欠く結果となっていた。この残響音に対する 対策として会場内にラスクボードを配置し、音響的改善を図る。


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(1)ラスクの設置方法
配置図のごとく、会場の壁面に沿ってラスク・パーティションP−4及びP−6を各10面並べる。 この展示会場はラスクを持ち込んだときには既に完成間近であったため、ラスク・パーティションの 設置場所はイラスト・パネルの裏側に入れる以外に方法がなく、多少不自然な形となった。

(2)測定方法
音源として会場の中央部にあるリズム音樂用スピーカ4個を用い、そこから中心周波数125Hzから 4kHzまでのオクターブ毎のワーブル音を断続して流し、その音を集音マイク及びテープレコーダにて録音する。 後日、その録音テープよりテスト音が遮断された時の音の減衰波形を記録し、その傾斜から残響時間を、 また波形そのものから残響音の特性の変化を調べる。

(3)測定機器

  1. 騒音計  NA-09(リオン)
  2. テープレコーダー TC-5550-2(ソニー)
  3. レベルレコーダー

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(1)残響時間

Hz 125 250 500 1k 2k 4k
ラスクなし T0(sec) 1.08 1.42 1.25 1.35 1.07 0.88
ラスクあり T1(sec) 1.00 1.26 1.15 1.30 1.01 0.76
差 T0−T1(sec) 0.08 0.16 0.10 0.05 0.06 0.12
ラスクの吸音力(m2) 14.4 17.4 13.6 5.6 10.8 35.0
見かけ上の吸音率(%) 80.2 96.9 75.4 31.0 60.1 194.0
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(2)残響音減衰波形
各周波数ごとにラスク・パーティションのある場合とない場合との波形を対比してまとめる。

125Hz

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250Hz

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500Hz

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1000Hz

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2000Hz

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4000Hz

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  1. ラスクパーティションを配置した位置は、結果的にはラスクの効果を十分発揮する位置であったと云える。 全内面積合計727m2(天井254m2+壁219m2+床221m2+噴水33m2)に対し、ラスクパーティションの面積は18m2に過ぎないため、平均的に上がる吸音率は微々たるものである。
    しかし、会場での音の伝播の仕方には方向性があり、しかも壁面にあるイラスト・パネルの裏面は俗に言う音の 溜まり場になっていて、一種の共鳴器のような働きをしていたものと思われる。その位置へ低周波数領域まで吸 音力があり、音の反射に対して鏡面反射をせず、むしろ完全拡散反射に近い働きをするラスクをサウンド・トラップ的 に設置したため、ラスクの吸音力や見かけの吸音率が非常に高く現れるようになった。
  2. ワーブル音が切れた時の残響音減衰曲線をラスク・パ−ティションのある場合とない場合を比較対比すると 一般にラスクありのほうが波形の鋭い変化が抑えられ滑らかになっていることが分かる。この変化から直ちに音像定位 が向上し明瞭度が上がったとは云えないが、残響音の減衰はフラッターエコーや定在波によって変化するよりは滑らか である方が、音響的に好ましいことは想像に難くない。


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ラスク・パーティションを用いた第2展示室は平たい円筒形の建物で、隣接する第1展示室及びブリッジに 向けて大きな開口部があるため、収録するマイクロホンの位置はどこが最も会場の特性を表すかは難しいところである。 しかし、ラスクの導入により明らかに聴感上明瞭度が上がり、データ的にも好ましい方向になることから、 音響的な会場つくりにラスクは有効な材料であるといえる。