![]() 京都会館第一ホールにおけるラスク設置による音響特性への影響 京都大学建築学教室 古江嘉弘 この資料は、当時京都大学建築学教室の古江先生(現福山大学教授)が京都市観光局へ提出した報告書です。 |
はじめに
多孔質鋳鉄焼結板−「ラスク」−は、その制振性能、遮音性能及び吸音特性1)、
さらにその取り扱い易さゆえに、床衝撃音の遮断あるいは間仕切壁の遮音向上などに用いられたり、また主として音楽愛好家に
よりオ−ディオシステムの性能向上あるいはリスニングル−ムの音響改善などのためにも用いられ、その効果が確認されている。
2)
|
1.京都会館第一ホ−ル概要
京都会館は、昭和35年4月、京都市左京区岡崎公園の一画に建設された市立の文化会館で、その中には2400人収容の第一ホ−ル、1300人収容の第二ホ−ルのほか、大小会 議室がある。(設計:前川国男設計事務所) |
天井及びバルコニより上部の側壁はラス下地、モルタル塗プラスタ−、オイルペイント仕上で、バルコニより下部の、
後部側壁は6mm厚ベニア(一部有孔ベニア、下地ロックウ−ル25mm厚)である。前部側壁は柾カバ桜練付9mm厚難燃
ベニアで仕上げられた傾斜折壁となっている。また、ステ−ジには可動の反射板があり、ホ−ル全体の平面形が六角形
になるようにセットされる。ステ−ジ天井反射板は3枚組(可動)である。これらの反射板は、コンサ−ト開催時に
使用される。今回の調査でも、これらの反射板がコンサ−ト形式にセットされた。なお、室容積は20600m3、室内表面
積は5740m2である。 |
2.聴感試験によるラスクの有無の差異
2.1 ラスクの設置場所及び設置方法 2.2 聴感試験の方法
試験音として用いた音楽は、英国BRS作製の無響室録音テ−プの一部で、プログラムの内容は以下のとおりである。
2.3 聴感試験の結果 |
3.残響特性へのラスク有無の影響 ラスク有無により、残響時間に影響があるか否かを確認するため、以下に示すように 残響時間を実測した。
3.1 残響時間の測定方法
3.2 残響時間測定結果
図から明らかなように、実測値をみるかぎり、ラスクの有無による残響特性の変化はみられない。 |
4.短音応答に対するラスク有無の影響
ステ−ジから発せられた音が受音点まで、どのような時間経過を伝達されるかをみるため、以下のように短音応答波形を計測した。
4.1 短音応答波形の計測方法
4.2 短音応答波形の計測結果 |
5.むすび
既存の大ホ−ルを利用して、ラスク設置の音響特性に対する影響について調査を行った。当ホ−ルの現状は次のと
おりである。生音及び再生音は、1階客席中央部と2階客席正面が比較的に良い音で聞くことができるが、
500Hz以下の音圧分布に顕著な乱れが生じるためか、その領域では不明瞭な音となり、単発音に対してはエコ−現象
が現れ易くなる。今回のラスク設置実験は、これらの不明瞭な音を幾分かでも取り除ける事を期待したものである。
文献 |