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音場調整資料 更新日 2007/06/21
onjyoshiryo


京都市立芸術大学音楽学部におけるラスクの試用結果報告

onjyoshiryo 当時、京都市立大学音楽学部(視聴覚教育)浅井 憲教授のもとで、 ラスクパーティション(P−6)、ラスクボード(B−3030,BF−3020,BF−2010)、ラスクインシュレーター(I−6050,I−3020)を試用して実験を実施し、その結果を報告していただきました。

浅井教授ら研究員による実験結果:

テストA
専門講義室内のモニター(バスレフ型3ウェイ、キャスター付き)をキャスターごとインシュレーター上に設備した結果

イ)低音域の分離と音像定位が驚くほど明確になった。具体例として、レコード音楽で、コントラバスの連奏に 太鼓のトレモロ連打が重なる部分が、従来は一連続音としか聞こえなかったものが、はっきりと分離した連打音となり、 弦を弾く音質もクリアーに響き、自然な感じで再生される。
ロ)エンクロージャー内にBF−3020、BF−2010を入れると、低音・中高音共々鮮明になり、特にウーハーの 音域の中で200〜300Hz付近で音量が増大されたように感じられた。最初に聞いた時、一瞬低音がひっそりと減った ように思えたが、注意して聴くと重低音域帯が伸びていることに気付くようになった。
ハ)ダクトから手を入れてラスクボードの位置・方向を移動させると、はっきりと音質が変化することが感じとれ るが、どの状態が最もよいのかは複雑、微妙であり、相当大きな変化があるため、意見が一致せず困っている。おそらく スピーカユニットの持つ本性が素直に出ているのではなかろうか。

テストB
講堂ステージに設置されているメインスピーカ−(ホーン型3ウェイ、キャスター付) の側面と背面をP−6(3面)で囲み、ワイヤレスマイクで移動しながら音声テストを 行い調整室(講堂最後部2階)の窓から視聴した結果:

イ)従来、アンプの出力調整でハウリングを起こす限界であった位置(ツマミが2時の方向)を越してフルボリュームとしても、マ イクがステージ上にあれば全くハウリそうになるが、信じ難い程ハウリングマージンが稼げた。
ロ)音声がきわめて明瞭になり、特にサ行、タ行の音声ではっきりと差がわかる。
ハ)音像定位が安定し、中央付近で引き締まった声が再生されてくる。最後にP−6のパーティションを 撤去してスピーカーシステムを従来どおりに戻すと、音声が段々と不明瞭になり、ステージ上でもハウリングを起こすようになる。

テストC
オーボエ協奏曲、ファゴット協奏曲の練習(33名の小編成演奏)時に、ステージ上に、 P−6(10面)の配置を色々換えた場合の客席における音響変化を視聴した結果、 下図のごとく、オーケストラの左右に側壁面よりW=4〜5m離して八の字形に配備した状態が、 木管楽器協奏曲のコンサート用途しては最も良好である。

イ)客席の最前列(従来非常に音響の悪い場所であった)でも最後列(従来から比較的聴きよい場所であった)でも、左右に移っても均整のとれた音響が得られるようになった。
ロ)Wの距離により大きな変化が起こる。例えば、壁面に密着させるように移動させると、ステージから出る音源が 両側天井方向にまで広がり、音像がボケてしまい、客席の前後、左右の位置によって反響状態に大きな差ができて悪化し、図のごとく復元すると音像がはっきりと締まって、信じ難い程定位がよくなる。(客席が増すと、音響効果は微妙に変化するので、Wの距離や角度を僅かに変えて補正することで、客席側で良好な音場を作った効果が生まれると思う。)
ハ)従来、ステージ側壁面にある回転式大扉は、反響調整のために必ず全開または半開状態で使用しなければならなかったが、P−6(10面)を並べただけで、全閉状態で安定した反響条件を確保できるようになり、大きな問題が簡単に解決した。

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テストD
調整室の調整卓でミキシングするため、ステージ床面に密着状態で設置された2本(ステレオ、直接音集録用) マイク(1,2ch)から入る音質とステージ前方の空中吊り下げのワンポイント・ステレオマイク(3,4ch) の音質の変化を試聴した結果。

P−6パーティションのない従来の条件では、(3,4ch)のモニタースピーカー音質は 反響音が多く過度にライブであり、(1,2ch)のクリアーさとは大差があったが、P−6を図 (テストCの図)のような状態に配備したときには、(3,4ch)の音質は(1,2ch)に 近づき、非常にクリアーになっている。

その他関係者の方々の声:

岩崎 勇 主任教授(木管楽器指導 オーボエ首席奏者)

練習状況を見るために講堂に入った途端、音響的雰囲気が全く違っているのに驚いた。さらにステージ両側の 大扉が閉まっている状態で、これほど反響状況が良くなっていることが信じられなかった。客席の位置による 音響状態の差が非常に少なく均質化されていることを、ステージ上の学生には感じ取れていないようだが、 良い反響条件で演奏できるようになっていることは間違いない。常設すべきすばらしい素材であると感心し、 面白い効果を体験し得たことを感謝する。

片岡義道 音楽学部長

岩崎教授から音楽効果が見事に改良される機材であるとの説明を聞き、大いに興味を持っている。自分でも体験し、 有効に活用することを考えたい。

西村研究職員(録音・音響技術担当)

収録される音(モニタースピーカ−の音)も、調整室の窓から聴く音もすべて明瞭度が上がっているのは ハッキリわかります。もっと早くから知っていたら学内のイベント収録や音響効果をグレードアップするのに、 ずいぶん楽に行えただろうにと悔やまれます。有効活用できることを期待しております。

松田研究職員(録画・照明・映像技術担当)

今日は、今までにはないほど上手に演奏されたように思え(聞こえ)、見直しました。ビデオに入った音も きっと違った音質で入っていると思います。非常に面白い楽しい材料だなと驚きました。

聴講学生

客席での音場が変化したのではなく、ステージから出てくる音の像が鮮明で引き締まった演奏 になっているように感じられた。今日の発表演奏者は上手そうに聞こえて、トクをしたと思う。

浅井 憲 教授 まとめとして

先ほどらいの演奏の出来映えについての皆の感想は本当だと思う。パーティションで囲まれたステージ上では、 壁や天井や床からの反射音の混入が大幅にカットされて、直接音によるアンサンブルが無意識の中で良く 一致した演奏性かを生んだものと思う。色々と音響改善の可能性を持った面白い素材であることを体験できた ことは大変喜ばしいことで、使用法のノウハウを蓄積し、学生の練習成果を少しでも良い条件で発表させてやりたい。 京都会館ホールなどでの定期演奏発表会の際にもラスクパーティションを持ちこむべきだと考えている。 学生たちには恐ろしい(?)材料になるかもしれないが、いろいろテストして試聴することが楽しみだ。

まとめ  スイサク

今回のステージでのP−6の実験から、この種のステージと客席との音響的つながりに新しい改善方法が 見出せたようにと思う。オーディオの実験で得られた音像改善の効果と全く同様に考えて、点音源的なス ピーカーと面音源的なオーケストラとが、本質的には大差なく、音像調整できることが確認された。 ホール客席での音響効果の改善に、ステージから放出される音源音像の質が、大きなウェイトで影響を しているといい得る。ホール設計の基本的条件の研究に有意義な実験をさせてもらえたと思う。