スピーカーユニットはコーン紙やダイヤフラムの前方に発しているのと全く同じ音圧を
背面にも発しています。この背面の音圧−背圧−はエンクロージュア内部に閉じ込められ、
数々の悪影響をシステム全体に及ぼしているのです。
例えばエンクロージュアの板共振、内部の空洞共振による定在波の発生、さらには内部の反射音が
コーン紙等を通って外部に漏れ出す現象等々。これらはいわばスピーカーシステムにとっては宿命的な
問題です。
こうした悪影響をラスクはエンクロージュアに挿入するだけで効果的に取り除きます。
これまでのグラスウールでは処理しきれなかった低音成分をも効果的に吸音しますので、グラスウール等
の吸音材と併用すればエンクロージュア内部にオ定在波を低減に到るまで除去できるわけです。
さらに、剛性が高く内部損失のおおきな「ラスク」は内部に貼り付けることによって板振動の
振動吸収材、エンクロージュアの補強材としても大きな効果を発揮します。
これらの効果は、まずウーファーコーンの動きがスムーズになり豊かで引き締まった低音再生を
可能にします。同時に定在波による高調波歪が抑えられ、中高域も抜けの良いクリアーな音質が得られます。
さらに箱鳴りの防止によって、引き締まった低域と分解能の高い中高域が一段と際立ってくるわけです。
●ラスクボードご使用にあたってのご注意
ラスクボードは鋳鉄で作られていること、多孔質(空隙が多くある)といっても
重いこと、鉄粉がこぼれ落ちやすいこと等を踏まえて以下の事項にご留意ください。
- ラスクボードはラップ(台所用品)とか、薄手の布でくるんで使っていただきますと
鉄粉落下を防止することができます。性能に問題はありません。
- ラスクボードはジグソウや金のこで切断したり、ドリルで孔を開けることができます。
切断面はボンドなどを塗って固め、鉄粉が落下しないようにしてください。
- ラスクボードの原材料は鋳鉄ですので常態では酸化皮膜で覆われていますが、水がかかると
当然、赤錆が出ますので水気には十分ご注意ください。ただし、赤錆が出てもラスク自体の性能には
問題ありません。ラスクボード周辺に対する赤錆の影響にご注意ください。
- ラスクボードは曲げ力に対して構造的にあまり強いものではありません。強く曲げると割れることが
ありますが、万一割れても、ラスクの性能、効果は変わるものではありません。そのまま
並べてお使いください。
●ラスクボードの使い方(その1) − 市販のスピーカーに装填される場合
一番手軽で効果の上がる方法は、エンクロージュア内に取り付けてある吸音材はそのままにし、
その上にラスクボードを立てかけるやり方です。エンクロージュア内の余分な音圧をラスクが吸収し
スピーカーユニットのコーン紙の動きがスムーズになるため、音の分離がよくなってクリアーに
なります。特に低音域に効果的です。
- エンクロージュアからスピーカーユニットをはずし、エンクロージュア内のすきまにラスクボード
を入れる。
- もしエンクロージュア内に吸音材が一杯充填されていて、スピーカーユニットの裏側にラスクボードを
入れる隙間がない場合は、中の吸音材を1〜2パック取り出してください。
- ラスクボードを入れる位置には特に神経を使う必要はありません。中で倒れないように置きさえすれば
よく、密閉型でもバスレフ型でもユニット(ウーファー)の真後ろにやや斜めに立てかけるのが一般的で、
効果的です。
- ユニットをはずす代わりにダクト穴を利用してラスクボードを入れても効果があります。
- エンクロージュアに入れるラスクボードの量は大型のエンクロージュアでは、内部面積の5〜6%を目安
としてください。
- 200リットル以下の中・小型のエンクロージュアについては、グラフをご参照ください。
●ラスクボードの使い方(その2) − スピーカーエンクロージュアを自作される場合など
スピーカーエンクロージュアを自作される場合には、一通りの構造が完成してから
下記の要領でラスクボードをご使用ください。
また、お手持ちのエンクロージュア全体の音色、バランスが多少変わっても(もちろんこれはチューニングで改善されますが)あくまでスピーカーユニットにフル能力を発揮させたいときはエンクロージュア内部に装填済みの吸音材をすべて出してしまってからラスクボードをご使用ください。
作業手順は次の通りです。
- まずエンクロ−ジュアの強度が不足している箇所を捜して下さい。エンクロージュアを外からたたいて、
ポコポコという音で強度不足を感じさせる箇所があったら、そこがラスクボードを取り付ける位置の目安と
なります。
- 取り付け位置の目安がついたら、ラスクボードに1〜2箇所穴を開け、内側からネジで仮止めしてください。
この状態でエンクロージュアを再び外からたたき、コツコツという硬い音に変わっていれば補強効果があがっているとみて差し支え
ありません。
一般的にエンクロージュアで強度が不足しがちなのは、
- スピーカーバッフル(フロントパネル)
- リアパネル
- 両側面
の順であり、天板および底板の強度が不足することはあまりありません。エンクロージュアをたたいても
強度不足が良くわからない場合は、この順番を参考に取り付け位置を決めてください。
- 取り付け位置が決定しましたら、ラスクボードをネジでそsのまま固定するか、エポキシ系の接着剤を
を使ってエンクロージュア内部に接着してください。(接着剤は数箇所の点接着でよく、全面に接着する必要は
ありません。)
- ラスクボードの使用量は300リットル以上の大型のエンクロージュアでは内部表面積の15%を目安としてください。
- 200リットル以下の中・小型エンクロージュアについてはグラフをご参照ください。
●グラフの使い方 − 例 エンクロージュアの内容積が80リットルの場合
市販の標準スピーカーシステムにおいて当初より用いられている吸音材をそのままにして、
ラスクを追加装填して調整を行うものとしますと、機種により、また聞かれる温情によりラスクの使用量は変わりますが
、概略図中の①②の範囲内(ラスク装填量0.06〜0.12m2)にあると推定できます。
基本的な調整方法は、まず一方(R、Lどちらでもよい)のエンクロージュアに基本量、即ち①の量を入れ、
モノラルにしてRとLのスピーカーの音を交互に聞き比べてください。次にさらに同じスピーカーにラスクを追加し、
同様に聞き比べてください。このようにして②の量になるまで同じスピーカーに追加しながら、そのつど聞き比べてください。
その結果大略①と②の範囲内であなたの最も好みに合ったすばらしい音を見つけることができます。
そのときのその量がラスクの最適装填量になります。それと同量のラスクをもう一方のスピーカーに入れて完了です。
なお、ラスクの面積が同じであれば、大型ラスクと小型ラスクによる効果の差異はありません。
ラスクの商品(ラスクボードキット)の面積は以下の通りです。
ラスクボードキット
BF−2010 : 0.02m2
BF−3020 : 0.06m2
B-6030 : 0.18m2
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